今回はCookie(クッキー)の話をします。何だか美味しそうな話に見えるかもしれませんが、全然美味しくない話です。
CookieとはブラウザでWebサイトを訪問した時に、Webサイトから送信される小さなテキストデータのことです。
Cookieを使うことでサイト上の行動を記録し、再び同じWebサイトを訪問した時に快適に閲覧することができるようになります。
ログイン状態の維持、ECサイトでカートに入れた商品が記憶できるのはCookieのおかげなのです。
また、マーケティング担当者にとっても、アクセスの解析やネット広告を行う上でも重要な技術です。
Cookieはここまで紹介した用途以外にも使用されていたり、複数の種類があったりするのですが、この記事では詳細な説明は割愛します。
Cookieを規制する流れ
ここまでの話だとCookieは便利で美味しい話なのですが、それだけではないのです。
近年、プライバシー保護の観点からCookieの利用を規制する動きが出ています。
例えばEUでは、2018年の5月に個人情報保護に関する法律である一般データ保護規制が施行されました。フランスではフランスのデータ保護機関「情報処理・自由全国委員会」が2020年12月10日にCookieの利用に関する規則に違反したとしてアメリカのGoogleに1億2,100万ドルの制裁金を科しました。
参考:REUTERS『仏当局、クッキー利用巡りグーグルに1億ユーロの制裁金』(https://jp.reuters.com/article/google-privacy-france-idJPKBN28K0YB)
このようなCookieの規制の流れを受け、Googleは2020年1月にGoogleが提供するブラウザChromeからサードパーティーCookieの使用を2年以内に段階的に廃止することを発表しています。つまり2022年の1月までにサードパーティーCookieが使用できなくなるということです。
参考:『ウェブのプライバシー強化 サードパーティ Cookie 廃止への道』
(https://developers-jp.googleblog.com/2020/01/cookie.html)
Cookieの規制が介護事業者に与える影響とは
前置きが長くなりましたが、Cookieの規制により、介護事業者にとってどのような影響があるのかをお伝えします。
(1)同意管理プラットフォームの活用の検討する必要がある
Cookieの規制が日本国内でも強くなれば、同意管理プラットフォームの活用の検討をする必要が出てくると考えられます。
同意管理プラットフォームはWebサイトを訪問した際にCookieなどの取り扱いに関して同意するか否かなどを管理するツールです。
最近少しずつ同意管理プラットフォームを導入している企業が増えていると個人的には感じていますが、日本での大企業のうち、WebサイトでCookieの利用に関する同意を得る為の画面の表示を行っている企業の割合がわずか7%のみということが分かりました。(イギリスは87.98%、アメリカは38.25%)
参考:日本経済新聞『クッキー同意確認、日本企業7%どまり 米欧に遅れ』
(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC12CWY0S1A510C2000000/)
ヨーロッパのようにプライバシーに対する規制が強まった場合、導入の検討が必要となる可能性があります。
介護業界ではそう多くはないと思われますが、海外、特にヨーロッパへの事業展開やヨーロッパからの人材を迎え入れている事業者は早めの対応が求められると考えられます。
プライバシーに配慮し、ユーザーが安心して使えるWebサイトを目指しましょう。
(2)リターゲティング広告に支障が出る可能性がある
現在ネット広告では一度Webサイトに訪問した方に対して、他のWebサイトでも追跡して広告を表示させることが可能です。
例えばECサイトで商品を閲覧していて、そのECサイトから離脱し、異なるWebサイトを閲覧している際にバナー広告でも、先程ECサイトで閲覧していた商品が表示されるのを見たことはないでしょうか?これはCookieを使用したリターゲティング広告によるものです。
そしてこのリターゲティング広告を入居者募集や求人募集に使用している場合、Cookieの使用に規制が掛かった時にこれまでのように使えなくなる可能性があります。これまでリターゲティング広告で良い結果を生んでいたとしても、将来的に施策として使えなくなる可能性があるということです。
結果を出すWeb施策の為に求められること
リターゲティング広告が使えなくなった状況で介護事業者が入居者募集や求人においても結果を出すWeb施策の為に求められることは2つあります。1つは(a)広告をどのサイトに表示させるのかを考えること。2つ目は(b)魅力的なコンテンツを自社サイトに用意することです。それぞれ説明を行います。
(a)広告をどのサイトに表示させるのか
Cookieの利用が制限され、ユーザーの行動を頼りにリターゲティングを行うことが難しくなる将来、どのWebサイトに広告を表示させるのかを意識することが求められます。ターゲットとなるユーザーの興味関心からどのWebサイトに訪問するかを考え、表示させるWebサイトを選ばなくてはなりません。例えば、介護施設の施設長のポジションにふさわしい人を探す時に、「介護施設の施設長がよく見るサイトは介護の応援ジャーナルだから、介護の応援ジャーナルに広告を表示させよう」というような感じです。適切な媒体を選択することが求められます。
(b)魅力的なコンテンツを自社サイトやSNS上に用意する
リターゲティング広告が機能しなくなった場合、自社のサイトのコンテンツの拡充が重要になってくると考えます。
理由としては、一度Webサイトに訪問したユーザーをターゲットに広告を表示させるという手法が通じなくなる将来、ターゲットとの接触機会を増や為の代替となる施策が必要となるからです。
その為にはWebサイトやSNSで魅力的なコンテンツを用意し、ユーザーに見つけてもらうことが有効です。
コンテンツを通じ、ターゲットを見つけ、育成して最終的には入居者やスタッフの獲得に繋げます。
新たに広告を表示させる箇所の選定やコンテンツを拡充させるのには、時間と労力が掛かります。Cookieが使えない時代に備えて今から取り組むことをおすすめします。
心配が杞憂となる可能性も
ここまでCookieの使用に制限が掛かった場合、どうなるのか、どうするべきなのかについて見解をお伝えいたしましたが、心配が杞憂となる可能性もあります。その理由はテクノロジーの発展です。テクノロジーの発展により、Cookieの代替となる仕組みができるかもしれないからです。プライバシーにも配慮した新しい仕組みが普及した場合に新たに対応しなくてはならないことは少なくなるかもしれません。
まとめ
この記事では介護事業者向けにプライバシーに関する懸念からCookieの利用が制限されつつあること、制限がされた際に考えられる介護事業者への影響と対策についてお伝えいたしました。
これからWebサイトのリニューアルを検討する場合は、プライバシーに配慮したWebサイトを用意し、ユーザーを安心して閲覧できるWebサイトを目指しましょう。またリターゲティング広告が使えなくなる事態に備えて魅力的なコンテンツ作りを行いましょう。
記事で紹介した同意管理プラットフォームの検討や今からコンテンツ作りに力を入れたいと考えていらっしゃる介護事業者の方は気兼ねなく相談してください。