「猿の惑星」という作品をご存知でしょうか。1963年フランスのピエール・ブールが発表した文学作品で、1968年には同作品を原案に映画化も果たしています。シリーズ5作品、リメイク1作品、リブート3作品が公開されており、2024年には通算10作目の公開も予定されているなど、映画史に残る名作シリーズです。

 古い映画ですので、腰を据えて見たことがない方もいるかもしれません。しかし、「猿の惑星」というタイトルや、主人公が海岸で自由の女神の残骸を発見し、猿の支配する見知らぬ星だと思っていたのは実は遙か未来の地球だったことが判明し、物語の幕が閉じる……というエンディングは、大抵の方が知っているのではないでしょうか。

 猿が地球を支配し、高い知能で人間を家畜のように扱っている。宇宙飛行士としてエリート街道を進みながらも、そんな世界に迷い込んでしまった主人公・テイラー大佐が、家畜化した人間の末裔と一緒くたにされ、猿に虐げられながらも脱出を目指す。ともすれば自らの倫理観と向き合わなければならない巧みなストーリー構成は、当時多くの方を夢中にさせたといいます。筆者は映画版のみ鑑賞したのですが、そのシナリオと、古いながらもリアルを追求した映像に目を離すことができず、一気にシリーズを通し見してしまいました。(2作目移行は企画の難航や低予算化等で割を食った作品もありましたが……)

 長く愛される「猿の惑星」。しかし楽しく鑑賞できるのは、それがあくまでもスクリーンの中の出来事だからではないでしょうか。

 コロナ禍をくぐり抜け、徐々に平穏を取り戻しつつある現在。地球が「猿の惑星」に変わる土台が着々と進んでいるかもしれないといったら、果たして皆さんはどんな反応をするでしょうか。

認可された新たな認知症治療薬

 2023年12月、認知症治療に効果があるという新薬レケンビ(一般名レカネマブ)が発売されました。

 認知症の原因となる脳内に溜まったゴミ……アミロイドβというタンパク質を除去することで症状を直接抑制する画期的な薬で、この仕組みは過去に例のないものだということで注目を集めています。

 対象はアルツハイマーの発症前状態~軽度認知症の段階にある方で、治療期間も2週間に1度の点滴投与が1年半。費用も安くないなど、特効薬と呼ぶにはまだまだ課題が残りますが、一時は発症すれば根治はできないと言われていた認知症に対して、1つの突破口になり得るものではないでしょうか。

 今後は更に改良が重ねられ、中等度以上のアルツハイマーに対して効果を発揮する薬が開発されるかもしれません。そうなれば、今や100年といわれる人生の時間を、誰もが最後まで自分らしく過ごせる。そんな世界が来るのも夢ではないでしょう。

 しかしそれが、地球を猿が支配する未知の惑星へと変えてしまうきっかけになるかもしれないとしたら、どうでしょう。

 次回は意外と知らない「猿の惑星」誕生秘話と新薬レケンビから見る、生物の種としての限界についてお話していきます。

記事後編はこちら

前の記事、後の記事

«
»